20年前の街(失恋について考える)

20年も前の街に行ってしまった。

大好きだったあの人がいた街。

きっかけは、『会いたい人に会えるというおまじないを試したこと。』『太陽フレアの影響で奇跡が起こる気がしたこと。』『2階の出窓から、あの時のように顔を出してくれている気がしたこと。』…などなど

街が近づき、思い出のコンビニが潰れていることに少しの不安を感じながら、ランドマークの小学校を目指してドライブ。

住宅街の細い路地を車で走る。あの頃はまだ高校生。自転車て駆け抜けた通りも車ではなかなかの難所。大人にはなって抱えてしまった荷物に動きがい鈍くなる感覚を感じながらも、1%以下の期待に鈍く心臓が高鳴る。道は記憶が薄れているが、感覚と匂いが導いてくれている。

『あった!』

間違いなく彼女のアパートだった。

2階の出窓を見上げながら待ち続けたブロック塀、ハトがいた小学校の校庭。帽子を投げ入れたベランダ。全てがあの日のまま残っていた。

思い出の部屋には電気がいついていないものの、かつてご飯をご馳走になった居間には電気がついていた。

急いで車を与え止めて。思い出の場所へ駆け寄った。満月に近い月の灯りに何度もおまじないをしながら。1階の入り口に集合ポストがある。そこには表札があるはず…

『絶対に負けない失恋方法は相手のその後を探らないこと』

そんなことあるものか! だって負けないかもしれないが勝てる可能性を放棄してるじゃないか。そう想って調べてしまったあの人の現在。2人の子供がいることを知ったばかりに『負けてしまった』過ち。

表札を確かめるかどうか、それが問題だった。